白鴎大学 HAKUOH UNIVERSITY

大学紹介 About HAKUOH

白鴎大学フォーラム2018

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白鷗大学フォーラムin小山
プロフィール

ハワイ大学総長

デイビッド・ラズナー

イリノイ大学で経済学学士、コンピューターサイエンス修士、ハワイ大学マノア校でコミュニケーション情報学博士号取得。1977年からハワイ大学勤務。

ジャーナリスト

池上 彰 氏 (いけがみ あきら)

慶応大学経済学部卒。NHK入局後、社会部記者などを経て退職し、フリージャーナリストとして活躍。東京工業大学特命教授。著書に「世界を動かす巨人たち」など。

真実見極める知性を

 昨年12月1日、栃木県小山市の白鷗ホールで「第12回白鷗大学フォーラムin小山」が開かれた。白鷗大学の奥島孝康学長のあいさつに続き、白鷗大学ハンドベルクワイアのメンバーによるハンドベル演奏で開幕。白鷗大学と交流協定を結んでいるハワイ大学の協力を得て、「フェイクニュースと政治」をテーマにパネルディスカッションが行われ、約500人が熱心に聴き入った。今回は、JR小山駅前に新校舎「本キャンパス」が昨春、完成したのを記念し、東京で毎年開催してきたフォーラムを小山市で開いた。

基調講演 偏見やうそ ネットで拡散 ハワイ大学総長 デイビッド・ラズナー氏

 技術進歩により誕生したソーシャルメディアは、コミュニケーション環境を大きく変えました。ツイッターなどのSNSは、家族や友人、同僚とのコミュニケーション方法だけでなく、世界を知る術も大きく変化させたのです。

 当初、インターネットは民主化実現のためのツールとして、無限の可能性を秘めていると考えられていました。ところが、残念なことにネットを利用した偏見や権威主義、フェイクニュースが広まっています。

 IT革命とともにプライバシーも消滅すると言われます。新しい機器やソフトが、便利なサービスを提供します。その利用のため、多くの人が喜んで個人情報を提供しています。 心配なのは、蓄積されたビッグデータが偏見や権威主義の問題を大きくする要因となることです。では、これから私たちはどうすればいいのでしょうか。

 私が見いだした答えは「教育」です。唯一の選択は人々に教育の機会を与えることです。リスクを理解し、複雑な世の中で真実を見極められることが重要です。ハワイ大学は白鷗大学と教育を通して、「メディア理解」促進のため、チャレンジしていきます。

米欧 サイバー攻撃の脅威 ジャーナリスト 池上彰氏

  世界がグローバル化し、そして様々な格差が広がり、それに対する反発から、米国ではトランプ大統領が当選し、英国では欧州連合(EU)離脱が決まりました。いずれの国でも、そうなってから、右往左往しているわけです。

 グローバル化で、大勢の移民が西ヨーロッパにやってきた。それに対する反発から英国がEU離脱を決めると、思いもよらないことが起きました。英国ではEU維持のために拠出している莫大なお金を、英国の健康保険医療制度に使うべきだという主張があったのですが、実はEUから英国にも多額の補助金が入っていたことが後になってわかりました。

 EUからの離脱が決まる過程でフェイクニュースが、大きな威力を発揮しました。例えば、英国民がいかにEUの規制を受けているかといったうそを描いた映画が作られました。トランプ大統領が誕生する過程においても、フェイクニュースがいろいろあったと言われています。

 正しい報道というのはなかなか伝わりません。ところが、フェイクニュース、びっくりするようなうそのニュースは、あっという間に広がってしまうわけです。

 さらに、ラズナー総長のお話にあったように、インターネットの技術が進んだ結果、様々な所でサイバー攻撃が起きるようになりました。コンピューターやネットワークに侵入し、システムを大きく変えてしまうわけです。

 この前の米大統領選の時には、民主党全国委員会のコンピューターサーバーに何者かが入り込み、データを盗み、告発サイト「ウィキリークス」で明らかにするということがありました。

 オランダではサイバー攻撃を懸念して、デジタルで行っていた下院選の開票作業を原始的な手作業に戻しました。

 こうした現実をどのように考えればいいのか。この後の皆さんと議論を深めていきたいと思います。

パネルディスカッション 多様な情報 向き合う ハワイ大学副総長 ジョン・モートン氏 ロイター日本支局長 ウィリアム・マラード氏 白鷗大学特任教授 後藤謙次氏

ハワイ大学副総長 ジョン・モートン氏

池上  米中間選挙が行われ、下院を民主党が奪還したことで「ねじれ議会」となりました。この結果をどう分析しますか。

モートン 多くの有権者が前回投票した人とは別の候補者に投票したり、前回投票しなかった人が今回は投票に行ったりしました。

マラード 民衆の考えに近い下院で歴史的なブルー・ウェーブが起き、民主党が勝利したと言えるのではないでしょうか。

池上  民主党のシンボルカラーは青で、民主党の躍進を「青い波」に例えたわけですね。後藤さん、日本から中間選挙の結果はどう見えましたか。

後藤  トランプ大統領に対してイエスかノーかという選挙だったと思うんですが、今回は「ノー」を出したと思います。大統領の分断的で、相手をさげすむような発言を繰り返す手法に、ストップをかけようという若者たちが多く出てきたのではないでしょうか。

池上  インターネット技術の発展で、新たな問題も出てきています。「BOT」と呼ばれるソフトが次々にツイッターの発言に反応し、多くの人から支持されているかのように見せかけるようなことが起きています。

ロイター日本支局長 ウィリアム・マラード氏

モートン フェイクニュースに加え、AI(人工知能)で生まれている情報などによって、私たちが知らないうちに操作されていることも危険なことです。

池上  マラードさん、ロイターでは、どのようにフェイクニュースと一線を画しているのでしょうか。

マラード 我々としては中立を保ちながらニュースを出し、読者がどう受け止めるかはコントロールできませんが、ある程度評判が定着すれば、ロイターや他の大手メディア、信頼できるメディアに戻ってくると期待するしかありません。

池上  日本では、フェイクニュースはどのような状態にあるとお考えですか。

後藤  日本では非常に抑制的です。活字メディアも、大きな報道メディアも、社内のチェック機関を持っており、そこに引っかからないようにしようと心がけていますから。しかし、フェイクニュースによって引き起こされた現象、それ自体は事実なんです。それがニュース性を持った時に、どう報じるのかという問題があります。

池上  モートンさんはハワイ大学の学生に、フェイクニュースとどう向き合っていくべきなのか、伝えていることはありますか。

白鷗大学特任教授 後藤謙次氏

モートン 最近学生たちに気候変動についてどのように情報を得ているのか、アンケートしたのですが、最多が「個人的な経験」「旅を通じて」という答え。次が、「フェイスブックやユーチューブといったSNSなどを通して」。3番目がネット上のメディア。4番目が「大学で学んで」。そして5番目が「友人や家族、あるいは飲み会の場で知った」という答えで、「新聞から」という答えはありませんでした。

池上  新聞やニュースメディア経由が少ない。一方で情報の入手先が飲み会での会話だけでは、必ずしも正確とは言えないと思うのですが。

モートン 若者が悪い情報ばかりを得ているとは限りません。もっとも、見出しや臨時ニュースを見ているだけでは、判断力は身につきません。また、最新のツイートから何かをジャッジすることも難しいでしょう。学生たちが、批判的な考え方をできるようになる指導をすることが必要だと思います。

池上  フェイクニュースとどう向き合っていくのかは難しいことですが、若い人たちに様々な情報に向き合っていく場を与えていくことも、私たちの責任ではないかと思います。

主催=白鷗大学
後援=読売新聞東京本社
協賛=リコージャパン株式会社 三和シヤッター工業株式会社 日立コンシューマ・マーケティング株式会社 鹿島建物総合管理株式会社 HARIO株式会社
協力=ハワイ大学

最新メディア技術を紹介

マイクロドローンレースの学生たち

マイクロドローンレースを運営した本学の学生たち

フォーラム開催に合わせて、12月1、2両日、白鷗アリーナで、ドローンの操縦やVR(バーチャルリアリティー=仮想現実)による飛行体験など、最新のメディア技術を紹介するメディアパークが設けられた。

 白鷗大学経営学部の菅野嘉則教授とゼミ生が中心となって企画。会場には、栃木県内の観光名所の遊覧飛行を疑似体験できるエリアや、人の動きをデジタルで記録するモーションキャプチャーの体験コーナーなどがあり、子供から中高年まで幅広い来場者でにぎわった。

モーションキャプチャーの体験コーナー

モーションキャプチャーの体験コーナー

白鷗大学4年で菅野ゼミに所属し、今回のイベント用にVRの映像を制作した小平嗣満さんは「大学では最新の機材を使って実践的な経験ができました。その成果をこのメディアパークで披露することができてうれしい」と話していた。そうした大学での経験も評価され、小平さんは、テレビ番組の制作会社に今春就職することが決まっているという。


本記事は、2019年1月19日付読売新聞(東京版)に掲載された 企画広告の内容を元に制作しました。